日本国債が崩壊せず売れ続ける理由、国家の債務を減らす裏ワザ

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国債とは?なぜ国は国債を発行し続けるのか?国債の歴史から読み解くその正体の続きです。

日本国家はローン地獄

2011年3月における日本政府の債務、つまり、日本の借金は924兆円。(国債及び借入金現在高 平成23年3月現在 財務省)

1万円札を並べると地球を37周してしまう天文学的残高です。

2010年の日本の歳入と歳出は以下の通り。

【歳入】
・日本政府の収入:48兆円

【歳出】
・一般の支出:53兆円
・地方への交付金:17兆円
・国債の利息:10兆円
・国債の償還:110兆円(1年で返済する国債の額)
<平成22年度(2010年度)財務省日本財政関係資料より作成>

こうやって見ていくと、日本はまさにローン地獄です。

日本は国債を発行し続けたことでこのような状況に陥ってしまいました。

普通ならたちどころに破産です。

ところが、日本はまだ破産していません。

それどころか、日本の国債はいまだに売れ続けています。

低い利回り=国債の価格が高い=人気がある

日本国債の人気の高さを示す数値として、その低い利回りが挙げられます。

たとえば、国債の額面が10億円、年4.5%の表面利率が付いていれば、10年後には元利と合わせて14億5000万円になります。

しかし、国債は入札制(オークション)なので、国債の実際の価格は額面とは異なります。

たとえば、額面より安い9億円で売れれば、最終的な差額は5億5000万円。利回りはおよそ年6.1% となります。

額面より高い11億円なら、差額は3億5000万円。利回りはおよそ年3.2%。

つまり、低い利回りは価格が高い証拠なのです。

日本の場合、新規発行10年もの国債の利回りが今年はおよそ1.3%。

これに対し、他国の国債の利回りは以下の通り。

・アメリカ:3.5%
・イギリス:3.8%
・ドイツ :3.3%
・フランス:3.7%
・ギリシャ:13.5%

日本国債は世界に比べて利回りが圧倒的に低い状態です。

「利回りが低い=価格が高い」なので、日本国債は購入価格が高くても売れる、つまり人気があるということなのです。

では、なぜ、ローン地獄である日本の国債は売れるのでしょうか?

なぜ、日本国債は人気があるのでしょうか?

日本国債が売れ続ける理由

日本の国債が暴落せずに買われ続けている理由として、次の3つが考えられます。

(1)政府が資産を持っている

日本政府が証券を持っていたり土地を保有し、そのうちの一部は資産として売ることが可能なもの。
資産を考慮すると、900兆円の借金があるが、そのすべてが借金ではなくて、実際に返さなくてはならないのはそのうちの一部と考えられる。
日本政府は以下の資産を保有している。

土地   :56兆円
有価証券 :92兆円
貸付金  :155兆円
現金・預金:19兆円
出資金  :58兆円
ーーーーーーーーーーー
資産合計 :647兆円
ーーーーーーーーーーー
(平成21年度 財務省 国の財務書類)

924兆円の借金からこの資産総額を差し引けば、300兆円程度のマイナスに過ぎなくなる。

ただし、資産をすべてすぐに売って現金化できるかというとそうではない。

政府が抱えている国有地を一切に全部売りに出そうとすると、まず買い手がつかない。

あるいは、そもそも価格自体が暴落してしまう。

なので、政府の資産を額面通りすべて売却できると考えるのは間違い。

(2)国内で買われている

国内で国債を買ってくれている人が多いと、海外の投資家の都合や短期的な利益を確定させるためであったり、何かパニックが起きたときに、一斉に日本から資金が引き上げて国債が売れなくなる。そういったことを防ぐことができる。

◎日本国債の保有者内訳
銀行など:44.8%
生損保保険など:20.2%
公的年金:10.2%
年金基金:3.0%
海外:5%
家計:4.3%
その他:3.5%
<日本銀行 資産循環統計(平成23年3月末)>

上記のように、日本国債の95%は日本で保有されています。

◎国債の海外保有率
日本:5%
アメリカ:48%
ドイツ: 54%
ギリシャ:74%
<財務省 債務管理レポート2010>

国債の海外保有率が高いと、海外投資家の投機的な売買に強く影響されてしまいます。

近年、ギリシャでは国家が多額の債務を隠していたことが判明し、海外投資家が国債を売りに走りました。その結果、ギリシャ危機に。

日本ではそのような危険性は低いと考えられているのです。

しかも、日本の場合は国内保有者の中でも、95%の国債は金融機関によって持たれています。

金融機関が保有していると、実際に国債に買い手が付きにくくなったときに、政府の方から国債購入を依頼するということも簡単になってきます。

以上の理由から、国内での保有が多いことは、国債暴落を防ぐ一因になっていると考えられているのです。

(3)税負担率(国民所得に対する税の割合)が低い

日本の税金が諸外国と比べて低いので、その気になれば、税金を上げることによって、きちんと国債を返していけると考えられています。

◎国民税負担率(対GDP比)国際比較
日本:29%
アメリカ:26%
イギリス:37%
ドイツ:39%
スウェーデン:44%
フランス:45%
ギリシャ:33.7%
<財務省 OECD 統計データ>

たとえば、日本の消費税は5%で年間税収は約5兆円です。

消費税を1%上げると税収が1兆円程度上昇すると言われているので、消費税を15%に上げると、税収は15兆円まで増えることが見込めます。

国債の格付け

売れ続けている日本の国債ですが、不安要素があることも否定できません。

日本は経済成長の伸びが鈍化しているため、国民の貯蓄残高が減少しています。

預金が減るということは、金融機関の資金も減少するということなので、国債の購入が今までのように進まなくなるのです。

つまり、国債を新たな国債で穴埋めするという借り換えがしにくくなっているのです。

世界には国債の信用度を評価する格付け会社があります。

そのうちの1つ、Standart & Poor’s(スタンダード&プアーズ)の日本国債の格付けの推移を見てみましょう。

2001年2月まではトップクラスのAAAでしたが、その後、AA+、AAと落ち、2002年4月にはAA-まで引き下げられました。

その後、2007年にAAへ引き上げられますが、2011年1月、政府に財政赤字に対処する一貫した政策が見られないとして、AA-まで再び引き下げられています。

AA-といえば、中国、サウジアラビア、クエート、イスラエルなどと同レベルです。

もし、さらに格下げが進むと、国債が買われなくなり、一気に暴落するのではないかという不安も広がります。

かつて、危機を迎えた国々は、その直前まで危機が近づいていることを認めようとはしなかったといいます。

国債の危機を回避する2つの方法

国債の危機を回避するには以下の2つの方法があります。

(1)歳出の削減:国から出るお金を減らす
(2)増税:国に入るお金を増やす

しかし、どちらもしわ寄せを受ける人々が存在し、必ず反対意見が出るため、なかなか実現は困難です。

もちろん、景気が上向いて、自然と税収が増えるのが一番の理想ですが、それが簡単にできるのでれば、そもそもこのような事態には陥ってないわけです。

では、他に膨らんだ国家債務を解消する道はあるのでしょうか?

国家の債務を減らす裏ワザ

国家の債務を減らす裏ワザ的な方法として2つのやり方があります。

(1)インフレーション

たとえば、インフレーションで物価が2倍になると、給与が2倍になり、税収も2倍になります。

その結果、今まで10兆円税収が集まってきたところ、2倍の20兆円の税収が集まることになります。

ところが、すでに発行している国債の金額は以前と変わらずそのままの額です。

そのため、実質的に政府の負担が減るというわけです。

これがインフレーションによる裏ワザです。

こんなインフレーションを国家がわざと起こすことなどあるのか?

一節によれば、人類最初の人為的なインフレによる債務の解消は紀元前4世紀、古代ギリシャのシラクサ王・ディオニシウス一世によって行われたと言われています。

王は約束手形を出して国民から金を借りた後、流通するすべての貨幣を返却せよと命令し、その後、1ドラクマコインが2ドラクマコインになるように刻印。

貨幣価値は半分になり、王は楽に借金を返済することができたそうです。

なんとも都合の良い天才的な手口。

2倍のインフレーションというとものすごい物価上昇のように思われるかもしれないが、たとえば毎年7%ずつ物価が上がっていくと10年後の物価はほぼ2倍になります。

以上のことから、インフレを引き起こすことができると政府は実質的な負担を減らすことができるのです。

インフレは夢のような方法で裏技といった感じですが、これには3つの問題点もあります。

(問題点1)インフレーションをうまく引き起こせるか

(問題点2)インフレーションに歯止めがかけられるか
いったん、インフレを起こすことに成功すると、政府は味をしめて、どんどん物価を上げていけば実質的な国債の負担が下がると、こういった形でインフレに歯止めがかからなくなる可能性がある。

(問題点3)新規国債が高く売れなくなる
インフレによって物価が2倍になったら、貨幣価値は半分になり、国債の価値も実質半分に目減りしてしまう。そのような国債は資産としての魅力がなくなり、今後誰も買いたいと思わなくなってしまう。

(2)デフォルト

デフォルトとは政府が借りた借金を返さないこと。債務の不履行。

政府が借金を踏み倒すことなんて考えられないと思う人もいるかもしれないが、歴史上多くの国や政府がこのデフォルトを行ってきました。

世界で最も安全な金融商品の1つ国債ですが、その歴史をひもとけば、デフォルトつまり踏み倒しのオンパレードなのです。

有名なのは、16世紀の強国スペイン・フェリペ二世の場合。

他国の銀行から借りていた多額の戦費を自らの都合で4回も踏み倒しています。

その後、スペインは1900年までに13回の踏み倒しというデフォルト回数の世界記録を保ち続けています。

デフォルトは何も古い歴史の話だけではありません。

1800年以降から現在にいたるまで、世界のどこかでデフォルトが起きています。

4割以上の国がデフォルト状態になっているピークが4回も繰り返しています。

最近では、1998年にロシア。2001年にはアルゼンチン。その他にもアフリカ、アジア、中南米で数多くのデフォルトが起こっています。

もし、日本でデフォルトが起きたら?

日本の国債は個人で持っている人はあまりいないので、実際に国債がデフォルトになっても個人への影響は少ないと思われるかもしれません。

しかし、実際には次のような形で大きな影響が出るかもしれません。

日本の国債の大部分を保有しているのは金融機関(銀行、ゆうちょ、年金など)。

そういった所にお金を貸しているのは個人です。

もし、国債がデフォルトになると、金融機関が潰れたり、年金が運用できなくなってくることが考えられます。

一度に複数の金融機関が破たんすれば、銀行に預けている預金が部分的に返ってこなくなる可能性もあります。

年金が潰れた場合には、将来もらうはずだった年金が受け取れなくなるというリスクも出てきます。

1998年、現実に国債のデフォルトを起こしたロシアでは市民の預金が封鎖されました。

さらにロシアでは多くの銀行が倒産。通貨のルーブルが暴落。消費者物価が84%上昇。その後、失業率は14%まで悪化。国民の平均賃金は23%減少しました。

影響は海外にも及び、ロシア国債を大量に持っていた米国の大手ヘッジファンドまで破たんし、多くの投資家が打撃を受けました。

日本国債はいつ暴落するのか?

日本でも第二次世界大戦中、発行した国債がデフォルトを起こしました。

その反省をふまえ、1947年にあらたな法律「財政法」が制定されました。

「財政法」第4条には「国の歳出は公債又は借入金以外の歳入を以てその財源としなければならない」とあります。

つまり、日本政府は原則、借金をしてはいけないと法律で定められているのです。

「財政法」によると、公共事業のための「建設国債」だけが認められています。

しかし、実際は毎年毎年多くの国債が発行されているのが現実です。

しかも、その国債の6割以上が過去の借金を返すための借金であるという現状・・・。

1965年、1年限りの法律「特例公債法」で「建設国債」以外の国債発行を認めてしまったのです。

以後、わずかな期間を除いて、毎年のように「特例公債法」を制定するという異常事態が続いています。

今、日本の国債は膨大な金額に膨れあがっていて、それに応じて、格付け機関の格付けも徐々に下がってきています。

一方で、国債の価格は歴史上類を見ないほど高い金額になっています。

格付けが下がるという国債のリスクが高まっていて、国債の価格(人気)は高いという非常に不思議な状況が起こっているのです。

実際にこの不思議な状況がこのまま続いていくかというと、そんなことは考えられなくて、どこかの段階で国債が暴落してしまうのかもしれません。

では、いつ暴落が起こるか?

それは、経済学的に予測するのは不可能と言われています。

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